東京高等裁判所 昭和32年(う)911号 判決
被告人 花谷一郎
〔抄 録〕
ところで、被告人が他四名と共謀の上、岩見美智子を強いて姦淫しようとし、或はやにわに同女を引き倒し、或は毛布を同女の顏にかぶせて、その頭部を足蹴にし、或は両腕両脚を押えつけてパンテイをはぎ取つた後、他の共謀者四名において順次同女を姦淫したという共謀による強姦の原判示事実は、原判決の挙示する証拠によつて、優に証明することができ、記録を精査してみても、原判決の右事実の認定に誤ある廉を見い出しがたい。しかり、而して、原判決は昭和三一年八月上旬頃に、被告人等の間に共謀の事実の成立したことを認定しているのではなく、その頃には被告人等の間に「皆で廻して関係しよう」などいう話が持ち出されていたというのである。共謀事実は、犯行の日たる同月一四日午後六時過ぎ頃で、犯行の直前期せずして被告人等五名の間に成立したというのである。被告人は姦淫の所為に及んだのではないが、被害者岩見美智子の上に乗つた事実は証拠上明らかであり、姦淫の所為に及ばなかつたことが如何なる事情によるかを論ずるまでもなく、すでに、共謀に加わり、しかも、強姦の手段たる暴行を敢てした以上、被告人において共同正犯の責任を免れることのできないことは、もとより、いうを俟たないのであるから、原判決が判示事実を認定して、被告人を処断するに判示刑法第一七七条前段第六〇条をもつてしたとて、何等違法というべき筋合ではない。従つて、論旨第一点の所論は採用するに由なく、該論旨は理由ないものとする外はない。
(中野 尾後貫 原)